。こいつは下手クソだがホンモノだよ。土人の絵だ。真人間の描いた絵だ。これがゴッホの正体だよ。だからあの男は、うわつらはヒステリィ猿だが、シンは真人間だよ。憐れんだりしていると、罰が当るぞ。帽子を脱いで、この絵に敬礼してればそれでいいんだ君たちは。
テオ (感動して立ち上っている)ほ、ほんとうですかゴーガンさん? ほんとうにそう思いますか? すると、兄は、兄は、もう立派な一人前の画家になったと思ってもよいのでしょうか?
ゴー なんですか? ……(不愉快そうな顔でそちらを見る。テオの感動が、この男には軽薄に見えて、不快なのである)
テオ いえ、もしそうだとすれば、私は弟としてどんなに嬉しいか! ありがたいのです! 兄のことを、めんどう見て来た甲斐があって私は、この――ゴーガンさん、ありがたいのです! 私は、私は兄のためなら、どんなことでもします! どうか、頼みます、兄のことを、ゴーガンさん、よろしくお願いします!(パラパラと涙を流し、ほとんどオロオロせんばかりに言う)
ゴー ふむ。……(相手を全く軽蔑して、ムッとして、三、四歩テオを避けながら)どんなことでもしますと言っている人が、ホンの
前へ 次へ
全190ページ中101ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング