新一 そんじや、次郎だつて家へそう言つて学校行くようにしたらいいじやねえか!
次郎 それが出来ればこんなこと誰が言うもんだ! タンボと畑で合せて三段ちよつとに、雑木の山が二段しか無くて一家七人、食つて行くのがヤツトだねえかよ。へえ、そこの次男坊主の冷めしぞうりだ俺あ。
新一 学校に行けなくとも自分で本読んで勉強できるよ。
次郎 本読む時間がどこにあるだ? 三百六十五日、夜なべまでやつてんだぞ、そうでなくとも兄ちやんなど今に相続の時が来ると俺にもチツトは田地を分けてやらざならねえ、家じや立ち行かなくなる、それ考えて今から青くなつてるのがチヤンとわからあ。俺が東京さ出ようと思うのが、どこがいけねえ?
新一 いけねえとは言わねえけどさ、お前が警察予備隊に入るだなんと言うからさ――
次郎 へん、新ちやんなんぞ、今では特権階級だかんなあ。それに町の工場に行つたりして共産党かなんかにカブレたアンベエずら。だからそんな――
新一 なんだと! 俺がなんで特権階級だ? へんな事ぬかすと、きかんぞ! 第一、警察予備隊に反対するだけで、なんで共産党にカブレたことになるんだ?
次郎 そうだねえか、よー、思い
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