ても、喜十さ、お茶がへえつたから、一杯のんで行けと声をかけてくれる家あ、たつた一軒も無えだあ。うう、つれえぞ、ばさま! こうして、それが、ばさまんちへ久しぶりに来やした。茶あ飲め、餅食えだ。俺を人間あつかいにしてくれるの、ここんちだけだあ、んだから、おらあ……

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(一同シーンと黙りこんでしまう)
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りき ……そうかや。
森山 まつたく、無理ねえんでやんすよ、うむ。
次郎 喜十のおじさんがホントじやと思う! だらず? まちがつているのは、村のそやつらだ。芹沢の金五郎なんつ奴、捨てて置くこと無えだよ。がまんにがまんしてるのに、いじめにかかる奴とは、戦わねばなんねえ、と俺あ言うんだ。そうだねえか! しかけて来られる戦さなら立たざならねえ! それで立たなかつたら、そいつは腰抜けだ。卑劣野郎だ。そいじや、そうよ、国も亡びるぞ! 俺あ、へえ、喜十のおじさんの身方にならあ。おじさん、やりなよ! かまうこたあ無えから、芹沢だろうと村の奴らだろうと、ゲンノウで叩き割つてやれ。なあに、そんで死んだら死んでもいい
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