呆だ俺あ。タンボの事知つてるだけで、ほかの事あカイモク知りやせん。金五郎が、んだから、俺のこと馬鹿にしても異論は無え。……、なんで、俺のタンボから水う取り上げようとさらすんだ? よ? それ聞こうでねえかい! (ドンドンと、畳を叩く)
森山 まあさ、そうイキリ立つても、金五郎は、此所にやいねえ。
喜十 だつてそうでねえか! 戦争すんで農地改革つうので、爪に火いとぼすようにして、金え拵えてよ、もとの入会《いりあい》分譲してもらつて、やつとまあ、これで小さいながら田地持ちの百姓だと、お前さま、勇んで稼いでるもんに、こんな事する奴、鬼だねえか!
森山 また、よりによつて隣り同士であんだけ仲の悪い芹沢と喜十さん、分譲地まで隣り合つちまつたもんだ。
せん ほんによ、因果だなあ!
喜十 鬼だねえか! どうしてこれが我慢していられるもんだ、ばさま! (ドンドンと畳を叩く)
りき わかつたわかつた。そう畳ぶつな、ホコリが立つていけねえ。見ろま!
喜十 それもなあ、金五郎からアダを受けるだけなら、まだええ。かやつの家と俺ちとは永え間のモツレでのし、あいだにや、俺の方が悪い事だつてあつたずら、人間、お互いだ
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