えよ。俺あ、君や友ちゃんの友達だから、それだから、心配になるからだよ。友ちゃんは、まあ、自分の考えでもってあんなふうになってしまったんだから、しかたがないとして――
明 あいつの事をいうのは、よせ。
北村 だからさ――俺だけじゃないんだよ。会社でも仕上や組立の方の連中の中で、君に同情して、なんとかしようと話し合ってるのが、かなり居るんだ。
明 同情? 同情たあ、なあんの事だい?
北村 同じように働いている者どうしが、だって[#「だって」は底本では「だつて」]、お互いに助け合うのは、とうぜんじゃないか。今こんなふうに世の中が戦争一方になっているからって、労働者がお互いに助け合って行かなけりゃならんのは、ならんと思うんだよ。
明 よし、おもしれえ! そんじゃいうぜ。そんなら、そんならだな、なぜ俺を、みんなで、あんなにイジメぬいて、追い出しちまったんだ?
北村 そりゃ君、そんな連中も居るさ。いや、大部分がそんな連中だ。そりゃ、しかたがないじゃないか、世間いっぱんが、こんなふうだし、みんな戦争で気が立っているんだから。しかし、そうでない者だって居たんだ、それは君だって知ってる筈じゃないか。

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