、工場で働いていたって、ブーッと来れば、いつなんどき[#「いつなんどき」は底本では「いっなんどき」]、それっきりにならんとも限らないからね。同じことなら、一日も早く出かけちゃった方がいいもんなあ。……しかし俺のいってるのは、そうやって明ちゃんが買い出しに行ったり――酒のんだりして、ヤケみたいになっているの、つまらんと思うから――
明 そうだよ、俺あカツギ屋だよ。酒も飲むよ。いいじゃねえか。なにが悪いんだい?
北村 いや、悪いというんじゃねえけどさ――
明 そいじゃ、俺んちじゃ、どうして食って行きゃいいんだよ? 三月に焼け出されてからこっち[#「こっち」は底本では「こつち」]、(壕舎の中をアゴでしゃくって見せて)……これだぜ。オヤジは、あれで仕事をしているみたいだけど、なんにもしてや[#「してや」は底本では「してゃ」]しないんだ。人の話も聞いちゃいねえ、ああして時計をいじくりながら、兄きの事ばっかり考えているんだ。そうかといって俺がチョウヨウの芝浦の荷かつぎにクソマジメに毎日行って稼いだって、一日に十五円だよ。そいつを又、親方が三割ぐらいピンはねるから、手取十円だ。十円で四人口がどうして
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