手が軍だからなあ。
今井 いえ、この、今日のこれは、わたしらがなにしたのではありません。このおやじさんが(とモゴモゴして義一を指して)――この――(宗定に)これは、父親なんです。今日は、自分からやって参りまして、なんです。こんなやつが自分の家から生まれたのは相すまんから、父親の自分の手で叩き直してやる……そういいまして、一時間近く、力一杯に、この。……よせといっても、ききませんでねえ。――そいで、自分もこうして伸びちまったんです。いや、昔かたぎの、正直いちずといいますか――
宗定 ふーむ。
黒川 そうかね?そいつは――感心だなあ、しかし。……今井君、水でも汲んで来て。
今井 はあ。……(出て行く)
宗定 人見君――だったね?
人見 はい。(ていねいに、おじぎをする)
宗定 ……(ニヤニヤしながら、壁のそばに並んでいるイスの一つを自分の手で持って来て、室のまんなかに置き、それを腰におろしながら)どうだい、そいで? この前もサンザンいったように、もう、こいだけ、つまり半年以上もこうして来たんだから、いまさら、めんどうな事をいい合ってみても、はじまらん。君の方としても、もう答えようもないだろ
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