ちが責任をとりたくないもんだから、こっちへ廻してしまったのさ。憲兵隊やら動員の方の大将とか、東部軍管区とかの司令官とか、軍部というのは、上から上へ次ぎ次ぎと自分の責任になるらしいんだね。忙がしくって、こんなキチガイの一人や二人のことに、いつまでもかかりあっている暇はないともいってた。そりゃまあ、向うも、一日に四、五十人ぐらい、しょっぴいて来たり、ヤキを入れたりさ、ぼくらのお株を取っちまっているありさまだもん、忙しいのも忙しい。しかし君、こんな、ヤッカイなお荷物を、よりによって、ここへおっつけるのは、セッショウだよ。主任なんか、泣きツラかいているんだ。ヘヘヘ、……だから半分はムシャクシャばらで、こないだから君、ずいぶん、この、なんだ、見てると、かわいそうになるよ。アカやなんかとは違うしなあ。それに、こんなおとなしい男だからねえ。……だけど、いくら同情したって、しょうがねえんだよ。こんだ、気が附いて眼をさますと、ケロンとして「神さまから叱られますから、」……ヘ、ヘ、ヘ、シケちゃったあよ、まったく。ヘヘ、どういうのかねえ、この――(ニヤニヤしながら肋木の方へ)
人見 ――あの、だいじょうぶで
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