、なんだ、いちおう、この……いやいや、明君自身に対しては、別にいうべき事はなんにもない。先日からなんども話し合って、私あよく知っている。来年は自分もチョウヘイで[#「チョウヘイで」は底本では「チヨウヘイで」]、そうなったら、直ぐに特攻隊に志願するんだといってるしね、まじめな、今の日本の現実をよく認識しとる点でも、立派なもんだ。ただ、ああいう兄を持ったのが、まあ、不運なんだねえ。まあ、あきらめてくれるんだねえ。で、明日から、会社へは出て来させないように――わかったね? ……(義一のシルエットがガックリとうなずく)気の毒だ。あんたは、からだが不自由のようだし、息子たちがそんな事では、生活の事もあるだろうが、どうも、私などの力では、どうにもできない。まあなんだ……ええと、友吉の方は、憲兵隊の方にいつまでも置いとくわけには行かんし、――いや、もしかすると、発狂したんじゃないかという疑いで、精神カンテイもやらしたらしいが、そうでもないらしい。しかたがないので、警察の方へまわしたようだ。本人があの通り、まるでおとなしい。ただ反抗するというのとは違うしねえ、ただのチョウヘイ[#「チョウヘイ」は底本で
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