、内の工場は、さきおとどし、やっとまあ[#「やっとまあ」は底本では「やつとまあ」]、時計工場から飛行計器の製作に切りかえて、指定工場になったばかりだ。そこの工員の、しかも熟練工の中からアカが飛び出して、戦争反対をしたとなると、もちろん取りつぶしだ。ヘタをすると、私ども主脳部はみんな、ひっくくられてしまう。だからまあ、とにかく、そんな事になって[#「なって」は底本では「なつて」]、ひと安心だが、それにしても、又どんな事になって、指定工場を取り消しになったりしないとも限らんから、なんとか大至急、処置をしなければならん。それも、外部へはもちろんの事、工場内部でもだ、この間題がパッとしない内にだね、一刻も早くなんとかしないと、えらい事になる。わかるねえ、その点は?……(義一のシルエットが大きくうなずく)うむ、そいでまあ、あんたにも夜分に御足労をかけたわけだが……そんなわけだ、本人には、まあ、もちろん、会社から引いてもらうとして――そりゃ、これまであんなにおとなしい、それに腕は立つからねえ、会社としては――特にこの、今の時計の方でも又始めるとなると、部分品の工作となると、あんたんとこの息子以上の
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