ても、まだ自分のした事に気づかず)はあ?
伴 困るじゃないか、どうも――
[#ここから2字下げ]
(そこへ半開きになっていた扉から、そこまで連れて来た下士官の軍服の腕で背を押されて、ヨレヨレの訓練服を着た片倉友吉が入って来る。ほとんど少年といってよいほどの単純で柔和な顔が青い。からだつきと動作にどこか調子のこわれたような所ができている)
[#ここで字下げ終わり]
伴 ……そこへ、かける。
友吉 ……(伴にていねいにおじぎをしてから、人見を見る。相手を認め得ないでポカンとしている)
人見 ……(石のようになって、友吉を見つめていたが)……片倉。
友吉 ……(不意に相手を認めて)……先生。……(うれしそうに微笑)
人見 ど、ど、どうしたんだ、友吉君?
友吉 ……(マジマジと人見を見ていたが)人見先生……助けてください。……(子供らしくいって、唇のすみがギュッと下にさがり、からだが一つフラッとしたと思うと、立木が倒れるように前の方へストンと倒れて、動かなくなる。……その彼の頭が、人見のこしらえた水たまりのすぐわきにある)
伴 なんだ?……
人見 ……(二人ともユカの上の友吉の姿を見守っている
前へ 次へ
全180ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング