そこいらの家を一軒々々聞いて歩いて――。
北村 ……眼は、その後、どうなんだい?
友吉 ボンヤリ、見える――とまでは行かないようだが、ケントウぐらい附くらしいけど。
北村 ……そいで、仕事は、有るの?
友吉 今一つ受けてるけど、あと、どうも。――近頃あっちにもこっちにも時計の修理がふえたから――
北村 一つや二つパッチじゃ、しょうがないなあ。とてもそいじゃ、三人口――
友吉 しかたがないから、どっか盛り場にでも出かけて行ってやろうかと思ってる。
北村 ……会社にもどれりゃ、君ぐらいの腕だと、問題ないんだけどねえ。須田さんなど、君をほしがっているんだが――しかし、クローズドなんとかって、組合の方のなにで今、とても入れんからなあ。それに、ああしてゴタゴタしてるし――
友吉 ストライキは、その後、どうなったの?
北村 うまく行かないんだ。ううん、いっそハッキリとストライキをはじめてしまえば、まだいいかも知れんが、そうも行かないようで――だもんだから、かえって中でブスブスくすぶって、共産党と、そうでない方とが二つに割れてね、近ごろじゃ工場の中で時々両方のガワが腕ずくの喧嘩になったり――実にイヤだよ。
友吉 どうして、みんなで気をそろえてやれんのだろう? 同じように働らいている者どうしだもの、仲良くやれんわけはないと思うがなあ?
北村 やっぱり、オレがというやつだね。主義や主張のちがいも、もちろん有るだろうが、しかし、おおねは、やっぱり我《が》だ。正しいのは年中自分であって、シトのいう事する事はまちがっていると両方で――いや、みんなが一人一人そう思ってる。それさ。……つまり、けっきょくは、こないだの座談会の時の、君に対するみんなのシウチさ、あれと同じなんだよ。――
友吉 なに、あれは、もともと僕が悪いんだよ。久しく世間の事をまるで知らないですごして来たのが、いきなりあんなとこに引っぱりこまれて、どうも、へまな事ばっかりなにしたもんだから――
北村 そんな事あない。……僕あ、聞いてて、別になんにもいう気にゃならなかったけど――君をああして、みんながバカにするのを聞いてて、腹が立つというよりも、恥かしくなって――実に、顔から火が出そうに恥かしくなったよ。
友吉 恥かしい?なぜ?(びっくりしている)そんな君、どういう――?
北村 だって、そうじゃないか。ああして、急にみんな、まる
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