に仕度金も持たせねえぢや、やれねえ、か。……小父さんは旧弊だからなあ。そりや、僕だつて月給まだいくらも取つてゐないから、さうして貰えばありがたいにはありがたいさ。スミちやんに直ぐに着物買つてやれる。でもそんな事どうでもいいんだけどなあ。しかし、まあいいや。ね、君あ明日発てばいい。ね、君が上野に着く時にはチヤンと迎ひに出てるよ」
「うん……」
「本当は僕が明日まで居れば一番いいけど、若しか本当にクビにでもされたら詰らないからね。無論電報打つて呉れた友達がフザけてあんな文句入れたんだけれどね……まアだからホンの二日だけ寂しいのを我慢してくれよ。ね、いいだらう?」
「ん……」
「ありがたう。君と僕とはまたいとこ[#「またいとこ」に傍点]で小さい頃から仲が好かつたな。ね! ねえ! さうだら……ねえ!」
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接吻か何かしたらしい。
(音楽に依るストレツス)
[#ここで字下げ終わり]
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「いやん! ウフン」
「だつて僕達はもう婚礼をしたんだから、夫婦なんだよ。ね?」
「ウフン……んでもおらあ途中がさむしいが! 汽車こ乗んの初めてだか
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