……」(変な謡曲)。
「お父つつあん」と起き上つた少年。
「このう……このう」――何かを紛失でもしたやうにその辺をキヨトキヨト見廻す彦之丞。

○めんくらつて、しばし呆然としてゐた配達夫が、やつと気を取り直して「電報つ!」
「えゝと……あん※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」彦之丞
「鈴村彦之丞方、クスノキ、イチロクさん、電報!」
 花婿、飛びあがつて来て、受取る。

 電文
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「ハナシキマリ五ヒカホ
 ツナギ アリカエレオ
 ヤヂ イワクマニアハ
 ネバ クビ ヨシダ」
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○桃の花の花盛りの山村の風景(移動で)
         (パストラール風の音楽)

 しばらくして会話(画面は山村風景)(伴奏音楽)
「僕の方は明日どうしても発たなきや間に合はないんだが。然し君は……小父さんがあんなに云ふものをねえ……だけど本当は仕度も何も要りはしないんだから一緒に発つといいんだがなあ」
「だつてえ……お父うが明日コロば売つて金ば持たせてやるからつて……」
「一人娘を東京くんだりまで嫁〔縁カ〕づかせるの
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