転士はやつきとなつて、鶴ハシを取つて、工夫の足の横を掘りはじめる。
 「そこだつ!」「もう少しだ!」等々々。
 全員の動き――。(カメラ)

 工夫の足が岩の下から抜ける。――トツサに飛び退く工夫。トタンに、下部を掘られたために岩を掘つてゐた人の方へ向つてグラリと動く。岩を押してゐた人々が飛び退く。
 見てゐる人達(特にお若)の叫び声。
 鶴ハシを打込んだ時に、岩がゆらいだために、退きそこなつた火夫が、その先を岩の下にグツと噛まれた鶴ハシの柄を肩にピツタリと附けて、全身の力で以て倒されまいと懸命になつてゐる。捨てて置けば力尽きて、倒れ、つぶされさうである。
 全員の動揺。
 捕縄のままの信太郎が何を考へる暇もなく、飛込んで行かうとした瞬間、
 「どけつ! 危い!」それを突除けてモヂリ外套をかなぐり捨て乍ら飛び出した男がある。むつつり傍へ立つてゐた土方である。
 スミ「あつ! あつ! 助けてつ! 助けてつ!」

 短い緊張した間。――

 パツパツとその辺を見て、やはり側に転がつてゐる手頃の岩を抱へて、鶴ハシの直ぐ側の岩の下に噛ませる。同時に
 「テコだつ!」
 二三人が転がつてゐる金テ
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