る。
スミは早く此処を降りて、二つ三つ後に通る汽車で逃げろと言ふ。しかし、ユリの身装を見ると異様なダンサー姿である。このままで行けば、又直ぐ見つかつてしまふだらう。発車は迫つてゐるし、スミは仕方なく、ユリの洋服を脱がせ、自分の着物をスツカリ脱いでユリに着せる。
発車の汽笛。
泣いて感謝するユリをせき立てて、外へ下ろす。ユリは車の人に見つからぬやうに、這ふやうにして、闇へ。スミの方を向いて伏し拝みながら。
列車は発車する。
○客車内。
やつと発車したので、喜んでゐる楽土達。
(楽曲の流れを此処でミートさせる)
お若がキヨトキヨトして、スミの行方を捜してゐる。
楽士達の楽隊が止む。
土方もスミの居なくなつたのに気附いて、
「あの娘さんは、どうしたのかね?」
お若「へえ……私もさう思つて――」不安になつて立ちかける。
旅商人「なあに、便所だよ。ヘツヘヘヘ!」
○第二番の車掌室では、
下着一枚のスミが、洋服を着ようとして苦労してゐる。長いストツキングを引つぱつて見たり。恐ろしく短いスカート。――引廻しマントが有るので、からうじて外見だけはごまかせる。
そ
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