てくれと頼んでみたけれど、どうしても許してくれないので、心ならずも逃げ出して東京へ向つてゐる)
スミ、同情して自分まで泣き出す。
スミ、再び金をやる。これで父親から持たされた豚代金はおしまひになる。ユリは、初め辞退するが、やがて感謝してそれを貰ふ。
スミ「そいで、どんな風にして東京まで行くだ?」
ユリ「この車で終点まで行き、いたゞいたお金で行ける所まで行つて、後は又なんとかして――」
汽罐車の方でシユーツ、シユーツとエキゾーストを吹き出す響。
それに元気を得た楽士達が一言二言喚声を上げて、二三の楽器で楽隊(「美しき天然」か何か)を奏し出した音。
スミとユリびつくりしてゐる。
やがてそれと悟り、ユリが青くなる。
スミ「あゝ! 曲馬とやらの人が四五人乗つてる。あ、さうだ、あの人達、あんたの事話してゐたつけ、思ひ出した! あんでも、あんたを掴めえるために居残りさせられてゐたつう[#「つう」に傍点]人達だ。このまま、これに乗つて行けば、いづれは見つかつてしまふ。どうしたらよかべ? どうすんの?」
困つてウロウロするユリ。窓からヂツと前部の方を覗いたりする。スミもうろたへ
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