下すつたで――」
楽士「へーい。あんたあ、オカラと草を食ふのか? まるで兎みたいな人だなあ!」
その辺の乗客がゲラゲラ笑ふ。
まつ赤になり、困つて、デツキの方へ行くスミ。そこで竹の皮包みの中味を見てビツクリし、次にどうしたものかと弱つてゐる。ゲーゲーと言つてゐた区長を思ひ出してゐる。
車が停車する。小さな駅。
車掌――「十分間停車」言ひながら外を歩いてゐる。
方々で欠伸の声。ボヤク声。小便に降りて行く乗客も居る。暗い外景。
スミ、竹の皮包みのやり場に困つて、捨てようとして、首を出して見ると、客車の窓から肩を出して外を眺めてゐる乗客の姿。間が悪くなり、デツキから降りて、列車の後部の方へ歩いて行き、捨てようとする。
豚の鳴声。
スミが振返ると、後部の二輌の箱の板張りの間に、外に向つてズラリと並んでゐる豚の鼻ヅラの列。
スミ、急になつかしい様な気持になり、近附いて内部を覗く。――自分のために売られた子豚達もしまひにはこんな目に会ふのだと思ひ、少し悲しくなりながら更に後部の方へ歩いて行く。
竹の皮包みを貨車の中の豚にポイとはうり込む。そしてヒヨイと目を上げると、列車の最
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