なつて、白ける。
スミはお若に同情して、父から貰つた金の中からその半分ばかりをやる。辞退するお若。それをキヨロキヨロ見る旅商人。――結局お若、心から感謝して金を受取る。
○退屈しきつて、楽器を引つぱり出してブーツと鳴らすサーカス楽士。他の楽士が欠伸しながら、「畜生、ユリの奴、逃げ出したりするもんだから、こんな不景気な目に合つて俺達が糞を掴むんだ。見附けたら只は置かねえから」等々々と喋つてゐる。
連れの女に酌をさせてウイスキーを飲んでゐる金持紳士。
汚い車室内に現出されてゐる小さい人生の姿。――
しびれを切らして立上つて、通路をゴトゴトと一人ダンスみたいな事をする楽士。――靴が何か踏んづけたと見えて、下を見ると、スミが区長から貰つた竹の皮包みが床に落ちてゐる。「こいつあ、いけねえ」と楽士それを開けて見ると、カンピヨーとオカラの煮たのと、えたいの知れぬ草の煮たものがコテコテと入つてゐる。楽士、変な顔をして眼を近づけて見る。
スミ(ヒヨイと見て)「あら、それ、おらのだ」
楽士「あんたのですかい?」
スミそれを取る。
楽士「それ、なんです?」
スミ「御馳走だ。区長さま
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