にかかるので悪戦苦闘する馭者。
先客は、隣村からCまで行く区長さん。――一升ビンとチヨコを持つてグビグビ飲んでゐる。既にいい機嫌である。スミと彦之丞と区長――以上三人の客。
区長は彦之丞と顔見知りなので、盃を差し、互ひに話し合ふ。
(ダイアローグはコンテイの時書く)
彦之丞、自分の旅行の目的を語る。
祝意を述べる区長。
彦「区長さんは、どちらまで?」
区長返事して、今日はC町の農業補習校で「農村代用食研究試食会」があるので、それに出席するためだと話す。「東京から偉い博士が来て、C町の婦人会の奥さん達が総出で、いろんな食物拵へちや、私等が食はされる側だけど、これが痛しかゆしでなあ。此の前の時はあまり変な物食はされて、帰つてから早速えれえ下痢をやらかして一週間寝込んだて。今日は当てられないやうに前以て酒飲んで行くさ。なんしろ、こんな不作では、百姓の食物が一つでも余計に出来ると言ふ事は結構な話だからのう……」
兇作の話。
農村の窮乏に関する一二の示唆。
C町の近くの村で起つた地主邸放火未遂事件の噂。区長「なんでもそこの持田を小作してゐる若い小作人がやつたと言ふ話だが、世間
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