て無い部分で、デングリ返りを打ち、立上り、又反対の方向にデングリ返りを打つ。三度四度と、うまい)ばあやん、来たぞっ!
百姓 これ、これ! なによ、するだ!
少年 んだから、来たじゃ無えかい!(言いながら今度は百姓に飛びかかり、その帯のわきを両手で掴み、百姓の腹に頭突きをするように頭を当てて、グリグリしながら、両脚をピンピン跳ねる。孫が久しぶりに逢った祖母に甘えかかるにしても、少し度を過ぎている)
百姓 こら、こら! ハハハ、この小憎め! 来たな、わかったから、そねえに跳ねるな馬鹿!
少年 そうじゃ無えってば! これだ!(言って、懐中から封書を出し、その中から紙を出して百姓の鼻の先きに突きつける)今朝、来たんだ! んだから、ばあやんや、じいやんや、慎吉に見せようと思って、俺あ二番の汽車で――へえ、読んで見ろ!
百姓 すると……試験受かっただか?(言いながら渡された紙を、顔から引離して眺める)ふむ……(当惑して、その辺を見廻した眼が青年に行き)甲州の孫でやすよ。二番目の慎造と言う野郎の総領だ。
青年 ……(微笑してうなずく[#「うなずく」は底本では「うなづく」])
少年 (ふくれて)ばあや
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