ん、そりゃ[#「そりゃ」は底本では「そりや」]、逆さだあ。
百姓 うん? そうか……へえ、何が何やら、俺にゃ読めねえ。んでも、受かったもんなら、それでよからず。
少年 母さんは、まだブツブツ言ってらあ。
百姓 なに、俺があんだけ言ってやったんだから、それでええのよ。(青年に)なにね、総領息子だから、女親にして見りゃ、そうは決心していても、なかなか、ふんぎりが附かねえのは当り前でやして――
青年 なんですか?……(百姓が手の紙を渡す。その上の文字をサッと見て)ほう、飛行機の方を志願したんだな。採用の通知じゃありませんか。(少年を見て)……おめでとう……(紙を返す)
少年 へえ、……フ、フ、フ、フ(山国の少年のことで、知らない人にてれて顔をこすったりしながらも、こみ上げて来る悦びをおさえ切れない)
百姓 (ニコニコしながら)そいで、いつだ、先方へ行くの?
少年 あと五日あらあ。父やんが連れてってくれるって。
百姓 そうか……慎も、じゃ、行くか?
少年 うむ……フ、フ、フ、フ……半年すると飛行機にのっけて貰えら。そしたら、この辺へも飛んで来て見せべえ。ばあやんが働いてるとこ、空から見たら、ど
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