――小さい子でやすが……慎造さんと言うのは、おばさんの二番目の息子でね、分家して甲州に行ってやすが……子供が多いので、孫の慎吉を一人だけおばさんが引取りやした……
青年 ……すると、おばさんの子供さんは全部で――
女 八人です。五人が男で、三人が女だ。……総領の慎太さんは満州で戦死しやした。……おかみさんも病気で死んだ。その子がサダちゃんでやす。……二番目の息子が、今言った甲州にいる慎造さんで、三番目は、よそへ養子に出て、四番目は出征中で、末の道雄さんは、こねえだ、ガダルカナルちゅう、とこで戦死しました。……娘は、みんなもう片づいてやして、その中の、まん中のスズさんの旦那が、やっぱし、今出征中……。
青年 ……すると、五人の息子さんの中で二人戦死なさって一人が出征中で――?
女 いえ、甲州の慎造兄さんも出征したんだけど、けがあして戻って来やした。
青年 そうですか。……
女 苦労の絶間が無えのです。……ことに、ガダルカナルで死んだ道雄さんと言うのは末の子じゃあるし、おばさん、じょうぶ[#「じょうぶ」は底本では「じようぶ」]可愛がっていたんで……黙ってなんにも言わねえでいるけど、へえ、つ
前へ
次へ
全78ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング