字下げ終わり]
青年 ……いつも、こうですか? 実に、よく働く――
女 ……へえ。……そこへ、わしらが、年中、詰らねえ話ばかり持って来て。……おばさんの内を本家にして、親類の家がウンと有りゃして、……始終、どっかの家で、何か有ると直ぐやって来る……親類だけでは無く、さっきの人のように、村中の事から、よその家のもめごとまで、手に負えなくなると持ち込んで来やすから。……へえ、おばさんも大変でやす。……それに、自分の身の上の事では、へえ、笑ってばかりいて、人の事となると、直ぐに泣く……へえ、直ぐに泣き出すんだ。(又、涙声になっている)たまったもんで無え。……そうで無くても、へえ、自分とこの苦労だけで、背負い切れねえんでやす。
青年 ……内で、すると、困っている――?
女 ううん、困ると言っても……少うしだけんど田地も六七段有るし、小作もちったあやっているが、とんかく、働いてさえ居れば食うに困ると言う程では無えが、楽ではありません。……病人は居るし……伯父さんが、腎臓が悪くてもう三年ばかし寝たきりでやす。だもんだで、サダちゃんとおばさんがシンになって稼ぐのです。そこに、慎造さんとこの慎吉ちゃん
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