百姓 へえ……その性の悪い弟がかえ?
女 うん……そいで、何だと思ったら、源次郎さん今度徴用になって、なんでも飛行機拵える工場に行くようになった……そんで、岩村田の内が、母と妹きりで無人になるので、是非帰って来てくれ……そう言って――
百姓 徴用か……そうかや……
女 おっかさんは、あんだけいじめ抜いて、飯を食わせるのも惜しむようにして、追い出すようにして返しときながら今更になって、いくらそんなわけが有るにしろ、又戻って来てくれは、あんまり身勝手すぎる……そう言って、どんな事があっても岩村田へやるわけには行かねえと言いやす……おっかさんは、あの気性で、いったん言い出したら、聞かねえ。お前が岩村田へ戻るようなら、もうへえ、かんどうする……わしも困っちまって――
百姓 ……そうかや。
女 ……どうしたらよかんべと思って――。
百姓 ……そうかや。……そんで、お前はどうしようと思ってるだ?
女 わしかえ?……んだから、わしには、どうしてええかもうへえ、よくわからねえ。……実あ川上にこうして居ても、ほかの事はなんとも無えけど、源太郎の事を思うと、わしも辛いのです。……んだけど正直言って、これか
前へ
次へ
全78ページ中48ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング