小諸の賀山君の妹さんから言って来ている。……賀山さんと言うのは源太郎の学校友達でやす。
百姓 ふむ、ふむ……
女 んだから、俺には、お前に、どうしても岩村田の家に俺の留守中、暮していてくれとは言えない。川上の実家に戻っていてくれても、よいと思う。どちらにしても、お前が居心持の良い所に居てくれ。それが一番だと思う。……特に川上の実家に居れば、川上ではお前のお母さんは病身だし、小さい弟が一人きりしか居ないのだから、かなり家の手助けになるだろうと思うから、結局、当分、実家に居てくれてもよいと思う。
百姓 ふむ……
女 ……ただ……ただ……お前は、たとえ何処にいても、俺の妻であると言う事だけは忘れないでくれ……それを忘れないで、しっかり、シャンとしてやってくれ……お前は気が弱いから、それを俺は――(胸が迫って来て、プツンと言葉が切れる)
百姓 ふむ……ふむ……(千歯のケバをむしったりして、何とも言わない――)
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(間)
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女 ……(涙声になりそうなのを、こらえながら)そしてね、……そしたら、四五日前、岩村田から源次郎さんがヒョッコリやって来て――
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