からの手紙には、こう言って来やした。(その手紙を懐中から出して開くが、それを読むと言うわけでは無く、手で開いたりたたんだりしながら、もう既に何度も繰返して読んでよく憶えている内容を言う)……自分は岩村田の母のキツイ性質はよく知っている。又弟や妹が事毎にお前にあたる事も自分の出征前からの事なので、充分に知っている。特に妹は不具者であるために、一倍ひがみが強いのだ。……それから母親がお前に当るのは、小さい時から同じ兄弟でありながら妙に母は弟がヒイキで、内心では弟に家督をつがせたいのだ。それで俺の家内であるお前が邪魔になるのだ……自分の母親の事をこんな風に言うのは、俺も悲しい。又、ムカムカする事もある。しかし母がそんな風になったのも、父が死んでから以来、永い事女手一つで俺達三人の兄弟を育てて来るために、いやでもキツクならなければならなかった事を思うと、俺には母を悪く思うことが出来なくなる。……お前が岩村田で箸のあげおろしに母や妹に当られ、山ん中で育った者は米の飯が珍らしいと見えて、よく食うなどと言われている事を思うと、俺は苦しくなってしまう。シゲさんは近頃ひどく痩せたように見えると、この間、
前へ
次へ
全78ページ中46ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング