、あの嫁あ険のん性でなあ。俺がそう言ってやって、受けさせるだけは受けさせたようだが、へえ、どうしただか。
女 そうでやすか……
百姓 ……すると、なにか、そんじゃ、お前が岩村田から実家に戻っているのは、源太郎知ってるだな?
女 へえ……だども、今度――
百姓 ……なんとした?(と言いながらも千歯にかかっているので、別に話を追求すると言う風でも無い。青年は、若い女が自分をはばかって話しにくいらしいのを見てとって、ユックリ立上って、小便でもしに行く風に上手へ歩き出す)……おっかあ、その後、あんべえはどうだや?
女 おっかさんは相変らず腸が悪い腸が悪いと言うて……そりゃいいが、近頃又一倍気むずかしくなって――(ユックリ歩いて上手のカシバミの叢の方へ消えて行く青年の後姿をチラチラ見る)
百姓 うん、ありゃ[#「ありゃ」は底本では「ありや」]気で患うと言う人だ。しっかりもんだが、カンがきつ過ぎらあ。おやじと入れ代ってりゃ丁度良かった。お前のおやじと言うのも、へえ俺の弟だが、百姓は巧者だが、なんせ気がゆるくていけねえ。つまらねえ所だけ俺に似やがった。ハハハハ。
女 ……そんでね、おばさん……源太郎
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