ってるだけだもの。ハハハ(と自分の形容に自ら笑う)
青年 ……(相手の話しぶりに微笑)
中年 ハハハ……全体、あのばさまなんて者は、へえ、村で……俺達の村で、へえ、なんと言ったらええだが……(この或る意味では雄弁な男が、手に取るように知っている老婆のことに就いて説明しようとすると、どこからどんな風に言えばよいのか直ぐには言葉が見つからない。しまいに若い女を振返って)……なあ、そうだらず?
女 へい……(これは微笑して、多くを語ろうとしない)
中年 ……なにさ……うん、あたりめえの、ばさまだ。どこの村にだって同じようなばさまの二人や三人、いつでも居るべし。川一つ山一つ越しゃ、へえ、誰一人知りゃしねえ。そんでも、ばさま居てくれねえと、やっぱし、こんで、俺達チョット困らあ。
青年 (おかしくなって)……よくわかりません。
中年 ……(うまく言えないので、自分に少しかんしゃくを起して、煙管を掴み、少しポンポンした口調になっている)んだがらさ……全体この……俺達が、なにしに此処へ来たと思いやす?(少し逆ねじの語勢)
青年 (やや閉口して)……先刻話していられた、その、家を畳んで、甲府の方へ行くと
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