ってる時なんぞにゃノベツ歌ってるが、改たまって歌えと言っても、歌うこっちゃ無え。いいかげん、デタラメづら。
青年 ハハハ……ノンキでいいなあ。
中年 (びっくりしたように相手の顔を注視するが、直ぐに笑い出す)佐様さ、ハハハハ……全く、とんだ、クワセモンのばさまさ。
青年 ……クワセモン――?
中年 あんた東京でやすか?
青年 はあ、いや……
中年 東京へんでは、近頃、だいぶ、この、野菜物なんぞ不自由だと言うが、白菜だとか大根だとか、どんな具合ですかね?
青年 さあ……僕には、どうも、よくわかりませんが――
中年 この辺からもチット東京にも出したいと思うとるが……こんな土地で、いろんな野菜は出来ねえが、白菜と大根それにジャガイモだけは、ほかに負けねえ……なんせ、しかし、荷受先が、以前から名古屋あたりばかりで、東京へは、まだ、へえ、いくらも出して無え。――んでも、この、東京あたりも、前からみると、だいぶ変ったそうでやすね?
青年 そう……変ったそうですね。
中年 まあ、へえ、わしらも、野菜位、町の人に食って貰いてえと思っているが、なんせ、荷造りをして運賃を見て積出しても、仕切値段が、こっち
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