しい時あ、村の家ごとに廻りもちで人手を出してやると言ってもかえ?(中年男うなずく[#「うなずく」は底本では「うなづく」])……うむ、……そんで、海尻の須山さんじゃ――?
中年 須山さんじゃ、はじめから言っている通りでなし。今更こんな山ん中へ入り込んで自分手であんなむずかしい二段歩からの水田を作りつづけて行く人手は無え。喜十がどうしても甲府へ出るんならば、致し方無え、丁度整理する時期も来ているで、銀行に渡してしまう……
百姓 うーむ……
中年 なんしろ、あすこでもかしら息子が兵隊に出て以来、居まわりでやっている二町歩足らずでも精一杯だで……こうなると論でも無きゃ筋でもねえ。現にやれねえだからなし、話したからって法がえしは附かねえ次第だて――
百姓 ……すると、喜十に泣いて貰うほかに仕方が無え――
中年 その喜十がでさ、……なんしろへえ、須山さんや、なんなら年貢なぞ段当り一俵ずつへらしてもええと言うとるんじゃが、こんで、叩き分けの時分に較べりゃ先ず五俵からの儲けじゃが……俺あ、へえ、年貢が高えの安いのを言っとるんじゃ無え、たとえどんなに安くっても、いまどき、俺達みてえな、からっ小作、やって
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