めえだあ! ハッハハ……(若い女も、それから笑われている百姓自身も笑っている。青年も意味はわからないながらニコニコして飯を噛む)
百姓 国三さの阿呆。(口の中でブツブツ言う)
中年 ……(煙草に火をつけてプカプカ煙を吐いていたが)へえ、阿呆に違え無え。阿呆でなきゃ、こうして二日も三日も、バッタの様に頭を下げ詰め、足あ、すりこぎにして、喜十がとこと海尻との間あ、お百度踏んでいやしねえづら。ハハ(まだ笑いながらであるが、此処にこうしてやって来た話の、いきなり中心点から語り出したらしい)……部落常会の世話役も、俺あ、もうへえ、大概いやになりやした。大体、俺なんぞ、世話役なんぞやる器量で無え。百姓やりながら、おこさまの指導員やってる位が精一杯だ。もっとも、おこさまも近頃みてえじゃ、指導員もあがったりでやすがね。ハハハ。
百姓 ……(ポカンとして聞いていたが、やがて中年男の話の後半を全然無視して)喜十がとこじゃ、どうでも、それじゃ、甲府へ出るちうの諦めねえだか?(中年男、ひげ面でガクリとうなずく)……こねえだの寄合いで、あんだけ皆の衆から言われてもなあ?(中年男ガクリガクリとうなずく)……夏場忙
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