「地熱」について
三好十郎
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【テキスト中に現れる記号について】
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たま/\
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この作品は、今から十五六年前、丁度僕が井上演劇道場と云ふ中間演劇なるものに関係してゐた頃、直接には井上さんの委嘱で書いたものですが、この作品そのものを書きたい気持はかなり古くからもつてゐたものです。
これが上演された時の配役は主人公の留吉を井上正夫、女主人公の香代を水谷八重子、お雪を岡田嘉子、その他当時の良心的な新派の役者が大勢出ました。
演出は、岡田嘉子と共に越境して、すでに亡くなつた杉本良吉で、東京劇場で上演され、かなり好評でした。
僕のすべての作品が急に思ひ立つて書いたものではないのですが、この「地熱」も又然りです。その当時のある種類の観客は、三好が新派からたのまれて書いたので、新派くさい芝居だと云ひました。私は弁解することが嫌ひなので、弁解はしなかつたけれども、実はさうではないので、僕が前から持つてゐて、書きたいと思つてゐたものを書いたので、僕としては一生懸命書いたものなのです。その後どこでも上演しなかつたの
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