マ芋の葉を煮て、その変な味のするやつをゴソゴソと噛んでいる自分の前に、モーロウとその青年の姿が立ったり……けわしい、つらい、やりきれない事が後から後からと突っかけて来たあの時期の、いろいろの事態と気分の中に、その青年のイメージが度々あらわれた。
時によってそれは実に美しい姿に見えた。しかし又時によって耐えきれないように醜悪に見えた。時によって私はこの青年を心から愛した。又時によって歯を鳴らすように憎んだ。時によってまるで自分の兄弟――というよりも自分自身――のように親しいものに感じられることがあるかと思うと、時によって他の遊星の生物のように遠々しく無縁のものに感じられることもあった。そのいずれにしても、この青年のイメージは私の心にへばり附いてしまって切り離すことが出来なくなってしまった。
そしてヒョイと気がついてみると、私は現実にその青年にまだ会っていなかったのである。私は私の中の青年――私が永い期間にわたって自分の中で結晶させた青年――を見ていたのである。それで、もう一度、実際のその青年を捜し出して会ってみようかと思い立った。すると妙なことに、私はその青年に会うのが怖くなっている
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