自分に気づいたのだ。
 怖いという気持の中には実にさまざまの複雑な深い要素が含まれている。それはいくら説明しても、説明したりない。結局は「怖い」という一言でしか表現できない。私はこの青年をシンから愛している。同時に、それと同じ強さで憎んでいるのである。それはちょうど私が自分自身を愛しているのと同じ強さで憎んでいる事と全く似ている。そして、私が自分自身を全く憎まず、ただ愛するだけになり得るかどうか(そうなりたいのだが)わからないと同様に、この青年を全く憎まず、ただ愛することが出来るようになれるかどうか(実にそうなりたいのだが)まだ私にはわからない。このような場合に、私に出来ることといえば、その事を作品に書いてみる事しか無いのである。それでこの作品を書いた。



底本:「三好十郎の仕事 第三巻」學藝書林
   1968(昭和43)年9月30日第1刷発行
初出:「三好十郎作品集 第二巻」河出書房
   1952(昭和27)年
入力:富田倫生
校正:伊藤時也
2009年4月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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