「猫」はかけないと思うたらすぐ下熱。まずまず大丈夫です。「猫」は一返君によんでもらう積りで電話をかけたのですが失望しました。はじめの方のかき方が少し気取ってる気味がありはせんかと思う。それから終末の所はもっと長く書くはずであったが、どうしても時間がないのであんな風になったんです。この二週間『帝文』と『ホトトギス』でひまさえあればかきつづけ、もう原稿紙を見るのもいやになりました。これでは小説などで飯を食う事は思も寄らない。君何か出来ましたか。病人などの心配があると文章などは出来たものじゃない。今日はがっかりして遊びたいが生憎《あいにく》誰もこない。行く所もない。まずまず正月に間に合うように注文通り百枚位書いて安心しましたよ。(三八、一二、一八)
[#ここで字下げ終わり]
十八日[#地から3字上げ]金
虚子様
六
漱石氏が創作に筆を執りはじめるようになってから、氏と私との交渉も雑誌発行人と人気のある小説家との関係というようなものがだんだんと重きをなして来た。今までは漱石氏は英文学者として、私の尊敬する先輩として、また俳友として、利害関係の無い交際であったのであ
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