んだなおじろう》氏『新小説』紙上選句の件につき御目にかかり御話申度由につき御面会被下候えば幸甚に存候。まずは用事のみ余は拝眉千万。不一。
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   一月十九日[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜様
      ○
明治四十年一月二十一日(葉書)
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 拝啓 庄野宗之助君の宿所をちょっと御報知願度と存候。以上。
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   一月二十一日[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜清様
      ○
明治四十年一月二十七日(葉書)
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 虚子君三月の能(九段)の席上等をとって頂く訳に行きませんか。今度も連れて行ってくれという人がある。モリスも取りたいと申します。都合はつきますまいか。
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[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜清様
      ○
明治四十年三月二十三日(葉書)
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 先日は御来駕手拭を御被り被下難有候。さて『ホトトギス』小説選抜の件は当分むずかしく御座候。正月に執筆の事はどうなりますやら、小生が『朝日』へ書き得る分量次第かと存候。これはあらかじめ約束もむずかしかるべきか。ともかくも出来得る限り『ホトトギス』のために御用を務める事に致すべく候。以上。
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[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜清様
      ○
明治四十年四月一日(京都下加茂二十四狩野方より)(封書)
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 拝啓 京都へ参候。所々をぶらつき候。枳殻《きこく》邸とか申すものを見度候。句仏へ御紹介を願われまじくや。頓首。
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   三月三十一日[#地から3字上げ]金
     虚子先生
      ○
明治四十年四月十九日(封書)
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 拝啓 もしや西京より御帰りにやと存じ一書奉呈致し候。近頃高等学校二部三年生にて美文をつくりこれを『ホトトギス』へ紹介してくれという人有之。一応披見致候処中々面白く小生は感服致候。乍毎度貴紙上を拝借致し度と存候が如何にや。来月分に間に合えば好都合と存候。
「京の都踊」、「万屋」、面白く拝見、一力に於ける漱石は遂に出ぬように存じ候。少々御恨みに存じ候。漱石が大に婆さんと若いのと小供のとあらゆる芸妓にもてた小説でも写生文でも御書き被下度と存候。近来の漱石は色の出来ぬ男のように世間から誤解被致居り大に残念に候。以上。
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   四月十九日[#地から3字上げ]金之助
     虚子庵座側
      ○
明治四十年五月四日(葉書)
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「七夕《たなばた》さま」をよんで見ました。あれは大変な傑作です。原稿料を奮発なさい。先達《せんだっ》てのは安すぎる。
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[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜清様
      ○
明治四十年五月四日(葉書)
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「花瀬川」はものにならず。伝四先生何を感じてこの劣作をなせるか怪しむべし。
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[#地から3字上げ]夏目金之助
     高浜清様
      ○
明治四十年七月十七日(松山一番町池内方高浜宛)(封書)
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 啓 松山へ御帰りの事は新聞で見ました。一昨日東洋城からも聞きました。私が弓をひいた※[#「土へん+朶」、第3水準1−15−42]《あずち》がまだあるのを聞いて今昔の感に堪えん。何だかもう一遍行きたい気がする。道後の温泉へも這入りたい。あなたと一所に松山で遊んでいたらさぞ呑気な事と思います。「大内旅館」についての多評は好景気の様也。三重吉は大変ほめていました。寅彦も面白いといいました。そこへ東洋城が来て三人三様の解釈をして議論をしていました。小生はよくその議論をきかなかった。小生の思う所は「大内旅館」はあなたが今までかいたもののうちで別機軸だと思います。そこがあなたには一変化だろうと存じます。即ちあなたの作が普通の小説に近くなったという意味と、それから普通の小説として見ると「大内旅館」がある点に於て独特の見地(作者側)があるように見える事であります。詳しい事はもう一遍読まねば何ともいえません。とにかく色々な生面を持って居るという事はそれ自身に能力であります。御奮励を祈ります。五、六日前ちょっと何を考えたか謡をやりました。一昨日東洋城が来た時は滅茶々々に四、五番謡いました。ことによったら謡を再興しようと思います。いい先生はないでしょうか。人物のいい先生か、芸のいい先生かどっちでも我慢する。両者揃えば奮発する。「虞美人草《ぐびじんそう》」はいやになった。早く女を殺してしまいたい。熱くってうるさくって馬鹿気ている。これイン
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