。『ホトトギス』へのせるともよすともその辺は勿論、御随意に候。以上。
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五月二十一日[#地から3字上げ]金
虚子先生
のせぬ時は御保存を乞う
○
明治三十九年五月二十九日(封書)
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若葉の候も大分深く相成候。小生フランネルの単衣を着て得々|欣々《きんきん》として而《しか》も服薬を二種使用致し居候。「千鳥」の原稿料御仰せの通にて可然《しかるべく》かと存候。「柳絮行《りゅうじょこう》」はつまらぬ由。小生もゆっくりと拝見する勇気今は無之候。『漾虚集』本屋より既に献上仕り候やちょっと伺い候。まだならば早速上げる事に取計わせます。以上。
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五月二十九日[#地から3字上げ]金
虚子先生
○
明治三十九年六月某日(封書)
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拝啓 小生近来論文のみを読んだ結果頭脳が論文的に相成「猫」などは到底かけそうに無之候えども、若し出来るならば七月分に間に合せ度と存候。然しこれは当人があてにならぬ事故君の方ではなおあてにならぬ事と御承知被下度候。薄暑の候南軒の障子を開いて偶然庭前を眺めて居るのは愉快に候。少々眼がわるくて弱り候。
碧梧桐「趣味の遺伝」を評して冗長|魯鈍《ろどん》とか何とか申され候。魯鈍には少々応え申候。大将はいつ頃出発致候や。あれは二年間日本中を巡廻する計画の由なれどきっと中途でいやになり候。もしやりとげればそれこそ冗長魯鈍に候。近来一向に御意得ず。たまたま机上清閑|毛穎子《もうえいし》を弄するに堪えたり。因って数言をつらねて寸楮《すんちょ》を置き二階に呈す。艸々。
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六月吉日[#地から3字上げ]金
虚子先生
○
明治三十九年七月三日(封書)
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啓上 その後御無沙汰。小生漸く点数しらべ結了のうのう致し候。昨日『ホトトギス』を拝見したる所今度の号には「猫」のつづきを依頼したくと存候とかあり候。思わず微笑を催したる次第に候。実は論文的のあたまを回復せんためこの頃は小説をよみ始めました。スルと奇体なものにて十分に三十秒位ずつ何だか漫然と感興が湧いて参り候。ただ漫然と湧くのだからどうせまとまらない。然し十分に三十秒位だから沢山なものに候。この漫然たるもの
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