痛んでしようがなかった。
「温泉にやりちゃあけんと、そりゃ出来ねえで、ウンと寝て癒《なお》してくんなさろ……」
息子は金がないのを詫《わ》びて、夫婦して、大事に善ニョムさんを寝かしたのだった……が、まだ六十七の善ニョムさんの身体《からだ》は、寝ていることは起きて働いていることよりも、よけい苦痛だった。
寝ていると、眼は益々|冴《さ》えてくるし、手や足の関節が、ボキボキ[#「ボキボキ」に傍点]と音がして、日向《ひなた》におっぽり放しの肥料桶みたいに、ガタガタ[#「ガタガタ」に傍点]にゆるんで、タガ[#「タガ」に傍点]がはずれてしまうように感じられた。――起きて縄でもないてぇ、草履でもつくりてぇ、――そう思っても、孝行な息子達夫婦は無理矢理に、善ニョムさんを寝床に追い込み、自分達の蒲団《ふとん》までもってきて、着《きせ》かせて、子供でもあやすように云った。
「ナアとっさん、麦がとれたら山の湯につれてってやるけん、おとなしゅう我慢していてくんなさろ……」
しかし、善ニョムさんは、リュウマチの痛みが少し薄らいだそれよりもよっぽど尻骨の痛みがつよくなると、我慢にも寝ていられなくなった。善ニ
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