占領をせんとしたとき、日本の通詞たちをダシにして大芝居をうつたことがある。つまり「同夜予は祕密に與かれる五通詞の外目付と大小通詞一同とを予の許に召集し」とヅーフは「日本囘想録」に書いてゐる。そしてカツサに和蘭本國はやがて平和に歸すだらうから、それまでヅーフを現任のまま繼續すべしといふ虚僞の聲明をせよと迫つたのだ。カツサは自身英國の手先であり、それを拒むためには通詞たちの面前で事情を明らかにしてしまはねばならない。而もヅーフは既に五通詞をして「祕密に與かれるもの」としてゐるのである。
もちろん歴史が示すやうにヅーフの恫喝は成功した。ヅーフは蘭領がすべて失はれたとき、ひとり日本の長崎でだけ同國旗を飜し得た和蘭歴史の功勞者となつた。しかし飜つてわが日本からみるときはまつたく圖々しいといはねばならぬ。英國に加擔するわけではないが、このときヅーフに反對行爲を示した本木庄左衞門と名村多吉郎の方針は、ヅーフが惡しざまにいふ精神からばかりではなかつたらう。しかも勝手に通詞たちを「召集」したりしたヅーフは、そのとき大通詞であつた名村、本木の二人について「予は此の機會によりて日本にては下級の官吏とも親交
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