でないのみならず、その他はくだ/\しい故ここには詳記しないが、五六廉位、植字の形式が違つてゐるのは不思議でない、況んや前記の如く寫本によつて植字したものと考へられるに於てをやである」といふ文によつても、或は輸入活字ではないかも知れぬ。しかし安政五年といへば「昔時本邦創成の和歐活字製作略傳」を信ずるかぎり、嘉平の活字は完成の緒についたくらゐの時であり、たとへば完成してゐたにしても島津の殿樣が他への流失を容易に許したらうか? 專門家でない私などの判斷はをこがましいが、若しそれがオランダ單語篇の活字とも相違するならば、そして輸入活字でないならば、嘉平の他にも活字を作つた人間がゐるといふことになる。
私は何とか手づるを求めて秋山氏の「濟生三方」を見たくてならない。いまは疑問の儘に一應措くより外ないが「江戸の活字」が歐文から始まつたといふ事實は、永年の印刷工であつた私にもびつくりする發見であつた。
ある日の午後、私は巣鴨の奧にI・K氏を訪ねた。二階の室に一時間ばかり待つうちに漸く主人は歸つてきたが、I・K氏は英語の教師でまだ若かつた。坊主ツくりの近眼で、私が自分の疑問について述べるうちも、伏
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