ツヒらは「シリンダー式印刷機」を完成してゐたのであつて、このシリンダー式こそ今日の「ロール」である。
ドイツ人ケーニツヒの發明は最もすぐれてゐたと謂はれ、科學の民族ドイツ、光榮あるグウテンベルグ以來の印刷歴史の傳統を辱しめなかつたが、ケーニツヒの完成した「シリンダー式印刷機」は、その最初の門出をイギリスの「ロンドン・タイムス」でしなければならなかつたのである。流浪のケーニツヒの發明機は、老いぼれた當時のヨーロツパ大陸では誰も相手にしてくれないからであつた。
西洋印刷術の傳統を破つた「シリンダー式印刷機」の發明がどんなに革命的であつたかは今日からみても想像できるところだ。それは同じ方向に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉する動輪の力だけで印刷物が飛びだしてくるのである。能力は一時間に千枚と謂はれ、イギリスの印刷工たちは大陸からケーニツヒの巨大な印刷機が渡つてくるといふニユースで一齊に動搖したと傳へられる。當時のロンドン・タイムス社長ジヨン・ウオルターは己れの傳記のうちに「――夜に入りて別に設けられたる建物中で新式印刷機によつてひそかに新聞印刷をなさんとせしが、職工の騷動を思
前へ
次へ
全311ページ中301ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
徳永 直 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング