度もお目にかかつたことがなく、まことに遠々しい間柄であつたのに、今やかうしてお近づきになり、同じ室に坐つて、話をしたり、食事をしたり致してゐるのです。まことに不思議な、そして愉快なことではありませんか!」――。
「六十斤砲を撫し」てゐるロシヤ人たちが「――あの時雙方の共通の氣持を現はしたこの挨拶を、何とお禮の云ひやうもなく、有難く思つた。」と書いたのである。この立派な國際的な挨拶は、ゴンチヤロフの見事な筒井肥前守の描寫と共に、永遠に生きるであらう。
川路もまた立派であつた。聰明なこの日本人にロシヤ人たちはおどろいてゐる。「日本渡航記」の筆者も、シーボルトと同じく「日本人は支那人とちがふ!」と叫ばざるを得なかつたくらゐである。そしてこんな立派な日本人の努力が、三世紀にわたる鎖國の行詰りから救ひ、蒸汽軍艦を長崎で喰ひとめ、むげ[#「むげ」に傍点]には「六十斤砲」を發射させなかつたのであるが、ほかにも立派な、新らしい日本人がたくさんゐるのを、ロシヤ人作家はめざとくめつけだしてゐる。
「――私の注意を惹いたものがあつた。――私はその男の名を知らない。彼は從者だつたから御檢使と一緒には入らなか
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