眼
徳永直
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)家《うち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)川村|検挙《あが》りました
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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「ね、あんた、今のうち、尾久の家《うち》(親類)へでも、行っちゃったがいいと思うんだけど……」
女房のお初が、利平の枕許《まくらもと》でしきりと、口説《くど》きたてる。利平が、争議団に頭を割られてから、お初はモウスッカリ、怖気《おじけ》づいてしまっている。
「何を……馬鹿な……逃げ出すなんて、そんな……アッ、ツ、ツ」
眼をむいて、女房を怒鳴りつけようとしたが、繃帯《ほうたい》している殴られた頭部の傷が、ピリピリとひきつる。
「だってさ、あんた……」
お初は、何かに追ったてられるように、
「あんた、争議団では、また今朝《けさ》、変な奴《やつ》らが、沢山《たくさん》何《ど》ッかから、来たんだよ………あんな物騒な奴らだものあんた、ほんとうに、
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