なってる筈だから、ひょっとすればその林君の子供が、この読者にまじっていて、昔の茂少年とそっくりに頬っぺたブラさげてこの話を読んでいるかも知れない。もしかそうだったらどんなに嬉しいだろう。
私は五年生ごろから、こんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]売りをしていた。学校をあがってから、ときには学校を休んで、近所の屋敷町を売り歩いた。
私は学校が好きだったから、このんで休んだわけではない。こんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]を売って、わずかの儲《もう》けでも、私の家のくらしのたすけにはなったからである。お父さんもお母さんもはたらき者だったが、私の家はひどく貧しかった。何故《なぜ》貧しかったのか、私は知らない。きょうだいが沢山《たくさん》あって、男の子では私が一ばん上だった。
こんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]は町のこんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]屋へいって、私がになえるくらい、いつも五十くらい借りてきた。こんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]はこんにゃく[#「こんにゃく」に傍点]芋を擦《す》りつぶして、一度煮てからいろんな形に切り、それを水に一《ひ》ト晩さらしといてあく[#「あく」に
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