熱情の人
久保栄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)辺陬《へんしゅう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)劇場人[#「劇場人」に傍点]
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小山内先生は、大学の卒業論文が英国の詩篇の研究であったばかりでなく、文壇へのデビユも「小野のわかれ」「夢見草」に収録された詩作であった。したがって身を劇界に投ぜられて後も、この詩人的なテンペラメントが、常に先生の行動を支配したということができよう。先生は冷静な演劇理論の遂行者というよりも、熱狂的な演劇の殉教徒であられたと思う。明治、大正、昭和の三つのジェネレエションにわたって、真砂座から築地小劇場にいたる劇壇生活の長い道程を、この詩人的な熱情がひと筋に貫いていると言っても過言ではない。一部の人の言うごとく、先生の性情が、ある場合、熱しやすいとともに醒めやすいという一面を伴ったことは否みがたいが、しかし日本劇壇のよき未来のために粉骨砕身する根本の精神においては、終始一貫して変るところがなかったのである。
たとえば、先生の伝記の重要な頁を占めるべき自由劇場の運動がそれである。この運動は、
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