の筆蹟とか、遺稿とか、あるいは初版本とか、世界各国におけるイプセン劇の舞台写真とか、または彼が生前愛好した家具調度の類にいたるまでを一堂に蒐《あつ》めまして、研究者の参考に供するということであります。そして当日は、詩人の墓前で諸外国の国賓やノルウエの朝野の名士が参列して、盛んな献花式を催し、夜に入ってはビョルンソン会館に国王の臨幸を仰いで華やかな記念祭が執行されます。
国内の模様はまず以上のような輪郭ですが、各国の演劇都市におきましても、さだめしこの機会に、沙翁以来の世界的戯曲家の業績を追慕する記念公演が盛大に行われるだろうと想像されます。ただ今のところでは、ベルリンの出し物だけ判明しておりますが、民衆劇場は「ペエル・ギュント」「ノラ」を、国立劇場は「皇帝とガリレア人」を上演するそうであります。
わが築地小劇場も、各国の演劇都市に負けずに、さかんなイプセン記念公演、展覧会、講演会を催します。築地はこれまでにも、小山内先生によって「ボルクマン」、土方さんによって「幽霊」と「社会の敵」の都合三篇を上演しておりますが、今回は三月一ぱいを全部記念公演に当てまして、「ノラ」「幽霊」「復活の日
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