聞きます。
 これは芝居のほうのことですが、百年祭そのものは、公使館で確めたところや最近朝日新聞社へはいったニュースを綜合しますと、十四日から二十二日まで九日間引つづいて催される予定で、そのために政府は独英仏伊その他十ヶ国からイプセン研究者イプセン役者の代表百名を国賓として招待しまして、彼の生誕地たるシーンや、彼が薬剤師の徒弟としてはじめて人生を観察したグリムスタットという小都会や、また彼が劇場の文芸顧問として、演劇の実際的知識を養ったベルゲン市などを巡遊しつつ、盛大な祝賀会を催すそうであります。またオスロ大学の主催でイプセンに関する特別講座が開かれ、これは一般に公開されます。おそらく国外から招かれる知名のイプセン学者――たとえば、アルフレッド・ケル、モンティ・ヤコブス、ベルンハルト・デイボルトなどの研究発表は、ここで行われるものと推定されます。なお、招かれた人々のうち、ゲルハルト・ハウプトマンは病気静養中、バアナアド・ショオは例のつむじ曲りから、これに参加しませんそうです。また同じくオスロ大学の主催で、イプセン記念展覧会を開催しまして、イプセンに関するあらゆる文献資料を――たとえば彼
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