るぞ、後で、吠え面《づら》かかねエ様にしろ、大事《でえじ》に使やア一生ある生命だア、勿体《もってえ》なくするな」
呶鳴続け、睨め付けてノソリノソリ往って了うと、
「一生ある生命には違《ちげえ》ねえが、其一生が平均三ヶ月てんだ、晩《おそ》かれ早かれで同じ事だ」
「然しあんなに駄目を押して、予防線《くぎ》をさすッてエなア何様《どう》せ例《いつ》もの洞喝《おどかし》だろうが――奴等も大部こたえたらしいナ」
「オイオイ、夫れよりや早引けの掃除ッてなア、弥々《いよいよ》明日になったんだぜ」
「それサ、己《おれ》も先刻《さっき》から其奴を言おうと思ってたんだ、何しろ難有《ありが》てエ難有てエ、ア、助ったナア」
と歓喜の色は一同《みんな》の顔に漲《みなぎ》った。
(四)
山の幹部連中は前の晩から十何里|距《へだた》った汽車の着く町迄|出迎《でむかえ》に出かけて居る、留守は上飯台の連中が、取片付けに吾々を追廻し乍らも、口では夫れとなく、裏切りをすれば生命は無いぞと脅すのを忘れなかった。然も眉間の間には心配と反抗との混交《まじ》った凄味を漂わせて居る。一方吾々下飯台の方は、
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