の希望が日を逐うて潮《うしお》の如く高まると共に、上飯台の連中や幹部連の凄惨な顔色は弥々《いよいよ》深くなる。只でも油断のない眼は耀《ひかり》を増し、耳は益々尖って来る。
「又今日も親方連は会議室へ集ってるが、念入と見えて、可成長くかかってるな。一番性の悪い、残酷な閻魔の親爺《おやじ》が、此二、三日の気の荒さッちゃ無えそうだ、だが独りぼッちになると時々溜息突いてるって話だ、余ッ程気になるんだろう」
「夫りゃア奴等だって悪い事たア百も承知の上だから気にもなりゃア、溜息も突こうサ……黙ッた黙ッた帝釈天だ」
「ヤイヤイ、此奴等ア又怠けやがるナ、何に言ッてやがったんだ、エエ、オイ(と山田に向って)生公《なまこう》、何の相談をしやがったんでイ」
「ウン、何も話なんか仕やし無えや」
「何ヨ、手前は一体生意気だぞ、オダ上げると焼きヨ入れてやるぞ、夫から手前達、今日は特別に早引けで五時限りにして遣《や》るから、其跡で持場や、部屋の居廻りヨ念入りに片付けて掃除をしろ、夫からモ一つ言って置くがナ、手前達、物を言うにゃア、ようく後前《あとさき》ヨ考えてぬかせ、ウッカリ顎叩くと飛んでも無え間違《まちげえ》にな
前へ
次へ
全15ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
羽志 主水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング